kors k
プロデューサー / DJ
世界的な音楽ゲームを牽引するクリエイターとして知られ、DJ/プロデューサーとしても国内外で幅広く活躍するkors k氏。EDMからハードコアまで多彩なジャンルを手がけるそのサウンドの裏側には、長年愛用してきたWavesプラグインの存在があるという。
今回は、そんなkors k氏に“日頃どのように活用しているのか”を中心に、各プラグインへの率直なコメントを伺った。 25年以上にわたり第一線を走り続けるアーティストならではの視点には、制作のヒントが随所に詰まっている。
2025.12.03
My favorite plugins
まずは普段愛用しているプラグインの使用例を挙げてもらった。
[Waves Tune Real-Time]
ケロケロ系のボイスエフェクトでは最も好きなかかり方をするピッチ修正プラグインです。さらに強烈にかけたい時には画像のように二度掛け、三度掛けをしています。
[Clarity Vx Pro]
ボーカルからノイズ除去をAIで行ってくれるプラグイン。声を綺麗にしたいときは真っ先にこれを試しています。Clarity Vx ProのAmbienceとVoiceを協調できる機能は凄いですね。ノイズ除去のリペアツールとしてだけではなく、例えばボコーダーと組み合わせて新しい種類のフィルターとして使ってみる...という想像力がかき立てられるプラグインです。
[CLA Vocals]
パッと挿してパッと使えるお手軽さが魅力。6つのボーカル・エフェクトが統合されており、ReverbとDelayを1つのプラグインで立ち上げられるし、「ひょっとしたらプラグイン内のコンプやEQで音作りしきれるかな?」なんてときも。まさにかゆい所に手が届くプラグイン。アナログ感のあるサウンドになるので、アナログノイズが気になる場合は後ろにゲートなどを設定しておくといいでしょう。
[Vocal Rider]
ボーカルの音量を自動で調整してくれるプラグイン。僕の場合はオートメーションを自分で細かく描くことが多いです。ボーカルの子音を細かく突いて歌詞を明瞭に聴かせます。
[Vocal Bender]
パッとフォルマントをいじりたいときはとりあえずこれ。フォルマントとピッチをいじる2つのノブがメインUIのプラグイン。
簡単にWet/Dryで調整できるMixノブがついている親切設計。
[Renaissance Vox]
シンプルで扱いやすいコンプレッサーです。ボーカル素材をコンプレッションノブで最大の -36dB までしっかり潰すことで、ブレスやアンビエンスまで持ち上がる “あの感じ” が得られます。ダンスミュージックのトラックにも負けないほどガッツリした音になり、その質感がとても気に入って使っていました。
[C4 Multiband Compressor]
「Low Level Enhancer」プリセットをキックによく使用しています。プリセットを挿すだけでも十分に良い質感になりますが、楽曲のBPMに合わせてアタックやリリースを調整すると、さらに効果的です。このプラグインは、音量を下げても存在感のあるキックが作りやすく、とても扱いやすいツールです。
[L2 Ultramaximizer]
OverTheTop(OTT)系のマルチバンドコンプが登場する以前、プラグインの入力ゲインに +20dB くらい突っ込み、L2で天井を作って“パツパツ”の音にしていました。リリースをARCをONにした際の効き方も実にL2らしいキャラクターで、そこがとても気に入っています。(注:ARC = Auto Release Control。リリースを自動で最適化するWaves独自の機能)
[Vitamin Sonic Enhancer]
こちらもOTT系マルチバンドコンプが登場する以前からよく使っていました。音が元気で派手になりやすく、“エンハンサー”というカテゴリーではあるものの、EQのような感覚で扱っていました。普段は、好みのプリセットを選んでから微調整する使い方が多いです。
[SSL G-Master Buss Compressor]
名前の通り、言わずもがなBusコンプとして使います。
画像の定番の設定はもちろん、ブレイクビーツなんかにはThresholdをかなり下げ、AttackとReleseを最速にし、Makeupゲインで持ち上げるとバチンッ!としたアタック感と、へばりつくGlue感が合わさって心地よい太い音になります。
[V-Comp]
パラレルコンプやBusコンプのバリエーションのひとつとして使用しています。ローゲインでうっすらと掛ける場合と、ハイゲイン気味にしてアタック感をしっかり出したい場合の、二通りの使い方をしています。
[GTR3]
ギターを使う際や、音をあえて汚したいときによく使います。他のアンプシミュレーターとの差別化にも効果的で、プリセットが優秀なのも魅力です。
[Infected Mushroom Pusher]
原音のニュアンスを生かしつつ、音を太くしたり存在感を増したいときによく使います。HIGHノブを調整しつつ、CLIP モードの PUSH ノブで作るソフトクリップのサウンドが、とても良い仕事をしてくれます。
[H-Delay Hybrid Delay]
通常のディレイとしての使い方だけでなく、画像のようにMSモードにしてFeedbackの値を100以上に設定、ディレイタイムを徐々に小さくしていくとループが徐々に短くなっていき、ピッチも変わって行く効果を作れます。(逆にディレイタイムを大きくしていくこともあります。)このテクニックはサイケトランスの展開などを作る時によく使っています。
[Center]
Centerはサウンドの広がりを調整できるプラグイン。僕の場合、音をレイヤーしたり、イメージャーやオートパンで散らしながら配置していくと、最終的に広がりすぎてセンターが薄く感じることがあります。そんなときは、マスターに Center を挿してサイド成分を落とします(基本的にブーストはしていません)。もちろん、必要に応じて個別のトラックに挿すこともよくあります。
New Pickup plugins
今回、これまで使用してきたプラグインだけでなく新たに使ってみて気になったプラグインをピックアップしてもらった。
[Sync Vx]
複数のボーカルトラックのタイミングとピッチを自動で整理して合わせてくれるプラグイン。先日、4人組のボーカル曲を制作した際のアライン作業(※ボーカルデータの位置合わせや調整)に使用しました。取りこぼした箇所の修正も直感的に行えるのが便利です。
スタジオ音響シミュレーションプラグインのNxシリーズ。とても面白いです。外スタジオのいい音で作業しているときの、"あの高揚感”にひたれるので、良い気分転換にもなります。いまのモニター環境に新たなモニターを追加したような感覚で、より客観的に判断するための材料にもなるのではないでしょうか。
[IDX Intelligent Dynamics]
ミックスのエネルギーやダイナミクスを調整するプラグイン。シンプルなUIで分かりやすく、効き具合も耳で判断しやすくて気持ちいいプラグインです。各チャンネルからBus、最終マスターまで幅広く使えるので、とても手軽に扱えます。
[Curves AQ]
初心者に限らず、一人で作業していて迷ったときの“指標”として、AIがオススメの処理を提示してくれるプラグインは非常に有効です。単に提案された設定を選ぶだけでなく、EQとしてカットとブーストをそれぞれ調整できる点も、かゆいところに手が届いていて良いプラグインだと思います。
[OVox Vocal ReSynthesis]
プリセットが秀逸で、これまで聞いたことのない質感のボコーダーサウンドが満載でとても興味深いです。ボーカルエフェクトプラグインですが歌声だけでなく、Colour Bass 系のサウンドやアトモスフィア、テクスチャー作りにも活用できると思います
第一線を走るエンジニア、トラックメイカー、プロデューサー、コンポーザーの方々に「マイ・フェイバリット・プラグイン」を挙げていただき、どこに、どんな用途で使うのかを伺いました。
Nakajin(SEKAI NO OWARI)─ L3-16があることでアレンジには間違いがないな、と確信を持てるんです。
永井 はじめ(エンジニア/プロデューサー)─ 僕が手がけた作品のピッチ補正は100%Waves Tuneです。音質も、ピッチトラッキングもNo.1
古賀 健一(エンジニア)─ H-EQが登場したときやっとアナライザーつきのEQがでたと、本当に嬉しくて
保本 真吾(CHRYSANTHEMUM BRIDGE)─ S1 Stereo Imagerはかれこれもう10年以上、嘘偽りなく全セッションで使っています
藤原 暢之(レコーディングエンジニア)─ MV2は欠かせないプラグイン。わずかな調整で狙った通りに音が立ってくれる
佐藤 洋介(サウンドプロデューサー/エンジニア)─ Manny Marroquin Delayを使った瞬間、嘘のように全ての悩みが解決されたほど
鈴木 "Daichi" 秀行(アレンジャー/プロデューサー)─ MV2はコンプでもリミッターでも得られないような自然な仕上がりが好きですね
芦沢 英志(サウンドクリエイター)─ Infected Mushroom Pusherは、とにかくMAGICですよ!MAGICを上げるだけで音像が前にきます
牧野 忠義(株式会社スピンソルファ代表 / 作曲家)─ M360 Surround Managerは、ゲームに実装するサラウンドミックス時に必ず使います
福井 シンリ(作・編曲家)─ S1 Stereo Imagerは下積み時代にお世話になったエンジニアさんが愛用してたのを機に自分も虜に
Gregory Germain(ミキシング/レコーディングエンジニア)─ ヴィンテージのアナログアウトボードと同じような感覚で使える、安心できるツールといえますね。