検索
ゲームミュージック制作に理想的な環境、DiGiGrid IOS | スピンソルファ牧野忠義

ゲームミュージック制作に理想的な環境、DiGiGrid IOS | スピンソルファ牧野忠義

USB、PCI、Thunderbolt…コンピュータとオーディオインターフェイスを接続する方式は様々あるが、次世代のスタンダードはイーサネットポートを使用したネットワークオーディオであると言われている。かつては商用のスタジオのみに導入されているという印象だったが、現在はパーソナルな制作環境やプロジェクトスタジオなどでも使いやすい製品が数多く登場し、一挙に導入が進みつつある。
DiGiGridからリリースされているIOSは、その筆頭製品と言ってもいいだろう。イーサネット接続、8chのマイク/ライン入力ポート、AESやSPDIFの入力ポートを備えているだけでなく、インプット信号やDAW上のプラグインをコンピュータに負荷をかけず、リアルタイムで処理するサーバー機能をもっている、まさにオール・イン・ワンパッケージだ。そんなDiGiGrid IOSをスタジオに早くから導入したのが、株式会社スピンソルファの牧野忠義氏だ。株式会社カプコンにて「モンスターハンター」「ドラゴンズドグマ」等の作曲家・ミュージックディレクター・エンジニアを務める傍ら、 「狩猟音楽祭」や「Video Game Orchestra」等に出演をしてきた牧野氏にとって、DiGiGridのIOSは理想的なオーディオインターフェイスであったとういう。
音楽制作をする方にとって最も知りたい「制作環境」について、牧野氏のインタビューを敢行した。

2020.01.01

Tadayoshi Makino

2台のコンピュータで1台のインターフェイスを共有できる、これに尽きる

牧野さんはDiGiGrid IOSをこのスタジオに導入してくださったとのことですが、どのような経緯で導入を決められたのでしょうか?

2017年の夏にシステムやインターフェイスの入れ替えを検討しはじめ、DiGiGrid IOSの他にもいくつかのハイエンドなインターフェイスを比較、実際に試してみて、最終的にDiGiGrid IOSの導入を決めました。

比較検討の結果、DiGiGrid IOSに決めていただいたということですね。決め手はどこにあったのでしょう。

やはりDiGiGridの最大の特徴でもある、“複数のコンピュータが同時に接続できる” という点。これにつきました。もちろん、サウンドも素晴らしい。

このスタジオを拝見するだけでも、Mac、Win混在で3台のマシンが確認できますね。

はい、メインとなるiMacを含め、Windows、ラップトップの3台ですね。特にゲーム用のオーディオ処理で欠かせないWwiseを使用しているので、Mac/Win両方のコンピュータで使用できることは「大前提」でした。

以前はそれぞれのマシンにサウンドカードを用意し、お互いをオーディオケーブルで接続して流し込みなどを行なっていたのですが、中継ポイントが増えることによるトラブルや音質劣化、音質の差などが解消されず、僕の中では大きな課題でした。

そうなると、8台までのコンピュータを同時に接続できるDiGiGridのシステムは牧野さんにとって理想的だったのではないでしょうか?

複雑にケーブルを這いまわらせることなく、これ以上ないシンプルな環境が手に入りました。それぞれのマシンからDiGiGrid IOSにイーサネットでつなぐだけですからね。インターフェイスを複数台もつよりも明らかにコストも抑えられましたし、何より音質の改善が大きなポイントでした。

SPIN SOLFA


A/BスイッチだけでMac/Winが切り替えられるのは大きなアドバンテージ

接続はIOSを中核として、それぞれのマシンとイーサネットケーブルで接続をするだけ。では、具体的にどのような音声がこのシステムでは行き交っているのでしょうか?

付属のコントロールソフトウェアであるSoundGrid Studioで、Mac/Windows間をダイレクトにやりとりする”Device to Device” 機能を使ったルーティングと、お気に入りのアウトボードを複数インプットしており、これらも同時に立ち上がっています。それから、MacBook AirにApple Logic Pro Xをインストールしていて、Logic Pro Xにしかないプラグインをアウトボードのように使うこともあります。

そのような複数マシン間とハードウェアを混在させるようなルーティングは、他ではできないことですね。SoundGrid Studioの中にある"eMotion Mixer"をフル活用されていますね。

はい、さらにeMotion Mixerが便利なのは、チャンネルにA/Bのインプット切り替えがあること。僕の場合は、常に出力する必要のないサラウンド用のリアチャンネルをアサインして、これをクリック1つでA/B切り替えができるようにしてあります。

Soundgrid Studio

このA/B切り替えは使う方によってさまざまな使い方ができるのがポイントですが、この使い方は理想的な使い方です。

いちいちミキサー設定のファイルを読み直すだとか、ルーティングを設定しなおすだとか、そういった煩雑な作業をすることなく、A/Bスイッチだけで環境を切り替えられるのは大きなアドバンテージですね。

同じ考え方で、アウトボードもA/B切り替えで1つのチャンネルに2つのインプットをアサインしています。こういったミキサーソフトウェアがフレキシブルであることは大事なのですが、それによって視認性が損なわれたり、直感的な判断ができなくなることは避けたい。IOSなしでこのルーティングを組もうとすると、普段の作業が非常に煩雑になってしまっていたところですが、おかげであらゆる切り替えが「クリック1つ」です。

Soundgrid IOS

このSoundGrid Studioの設定だと、Mac/Winそれぞれの環境で常にインプットチャンネルが固定できるので、まさしくシームレスに両環境を使いこなすことができますね。

そうなんです。さらにSoundGrid StudioでWAVESなどのプラグインを”掛け録り"することもできるし、同時に”掛かっていない”シグナルをレコーディングすることもできる。レコーディングすることを優先して、後から調整を行いたいときなどに便利です。

それから、Mac/Winからの出力にアナライザーを起動しておけるのも便利ですね。わざわざDAWを起動しなくても常に表示できるし、このアナライザーはIOS上のサーバーで処理されているので、どこにも負担をかけませんからね。

牧野さんご自身のブログに公開されていたIOSの導入記事は、多くの方に参考になるであろう深い使い方までを解説されていて、私たちも勉強になりました。

当初「複数のコンピュータが同時に接続できる」だけでも理想通りだったので、それ以外の数多くの機能を使いこもうとは思っていなかったのですが、使っていくうちに深いところまで理解が及んで「こういう使い方もできるんじゃないか?」というアイディアまで出てきました。そして、浮かんだアイディアが難なく可能になる懐の深さもあります。僕は今のところIOSだけで十分ですが、IOも自在に拡張していけることも魅力ですね。


プロフィール

SPIN SOLFA

牧野忠義

株式会社スピンソルファ 代表取締役・作曲家・プロデューサー
株式会社カプコンにて「モンスターハンター」「ドラゴンズドグマ」等の作曲家・ミュージックディレクター・エンジニアを務める傍ら、 モンスターハンターオーケストラコンサート「狩猟音楽祭」等にギタリストとして出演。2016 年 にサウンド制作会社「スピンソルファ」を設立・代表取締役就任。
壮大なシネマティックサウンドを得意とし、モンスターハンター:ワールド メインテーマ「星に駆られて」やFINAL FANTASY XVのDLC「オンライン拡張パック:戦友」や「エピソード イグニス」などハイエンドゲームタイトルの楽曲制作、マルチチャンネルミキシングを担当している。
ゲーム音楽制作では仕様考案やミドルウェア実装も行なうなどトータルプランニングを可能とするスキルを持つ一方、2018年8月(株)エイリム「ブレフロ音楽祭」ではオペラシティーにてオーケストラとブズーキ演奏共演。TV番組やアニメ劇伴への楽曲提供など活動の舞台を広げている。

人気記事

リズム隊のミックスTips! – Vol.7 ギター前編
リズム隊のミックスTips! – Vol.7 ギター前編

「リズム隊のミックスTips」。今回はギター前編です。

リズム隊のミックスTips! – Vol 3.1 番外ハイハット編
リズム隊のミックスTips! – Vol 3.1 番外ハイハット編

おかげさまで好評を頂いている「リズム隊のミックスTips」。イントロダクション、キック、スネアとここまで来ましたので、本日はハイハット編。番外編なので、Vol.4ではなく「Vol-3.1」としています。

もう部屋鳴りに悩まない。AIが不要な反響音を除去〜Clarity Vx DeReverb〜
もう部屋鳴りに悩まない。AIが不要な反響音を除去〜Clarity Vx DeReverb〜

ナレーションやボーカルを録音した際に、部屋の響きで言葉が聞き取りにくかったり、「部屋鳴り感」が強く出て映像や楽曲となじまなかった…そんな経験はありませんか?レコーディングスタジオのように本格的な吸音処

DiGiGrid DLS導入レポート – 鈴木Daichi秀行
DiGiGrid DLS導入レポート – 鈴木Daichi秀行

2013年のNAMMショーで発表され、ネットワークで自由にI/Oを拡張でき、Wavesプラグインが超低レイテンシーで使えるソリューションとして注目を集めてきたDiGiGrid製品ですが、2014年10月、ここ日本でもPro Tools向け

Waves Curves AQ vs Curves Equator: 2つの製品を正しく使い分けるためのTips
Waves Curves AQ vs Curves Equator: 2つの製品を正しく使い分けるためのTips

Waves Curves AQとCurves Equatorが、あなたのミックスのアプローチをどう変えるかをご紹介します。トーンの問題を解決し、音色や存在感を引き出し、これまで以上にスマートかつスピーディにプロフェッショナルな仕

リズム隊のミックスTips! – Vol 3 スネア処理編
リズム隊のミックスTips! – Vol 3 スネア処理編

好評連載中、オフィスオーガスタの佐藤洋介さんによる「リズム隊のミックスTips」。今回は3本目となるスネア処理編です。BFD3を使用したTips記事ですが、他社のドラム音源でも、実際のドラムレコーディングでも有効

人気製品

Ultimate
Abbey Road Reverb Plates
Abbey Road Reverb Plates

1950年代に生まれたプレートリバーブは、現在まであらゆる音楽レコーディングに欠かせない要素であり続けています。60〜70年代、ビートルズやピンク・フロイドを始めとする先駆的バンドに頻繁に使用されたのがアビー

Ultimate
API 550
API 550

60年代後半に誕生し、API独特のパワフルかつ滑らかなキャクターを決定づけた伝説的レシプロ・イコライザーを、プラグインで再現

Ultimate
Essential
C4 Multiband Compressor
C4 Multiband Compressor

C4は、マルチバンド・ダイナミクス・プロセッシングのパワーハウス。あらゆるダイナミクス処理をマルチバンドで解決します。4バンドのエクスパンダー、リミッター、コンプに加え、ダイナミックEQとスタンダードなEQ

Ultimate
Clarity Vx DeReverb Pro
Clarity Vx DeReverb Pro

より高速なダイアログ編集ワークフローへようこそ - これまで以上に強力に、正確に、コントロールしながら、音声からリバーブを除去します。Clarityの先駆的なAIテクノロジーは、録音を瞬時に、そしてリアルタイムで

Ultimate
Codex Wavetable Synth
Codex Wavetable Synth

Waves Codexは、グラニュラー・ウェーブテーブル・シンセシス・エンジンを基本とする最先端のポリフォニック・シンセサイザーで、Wavesのバーチャル・ボルテージ・テクノロジーを採用、VCF、VCA などを搭載する実際

Ultimate
Clavinet
Clavinet

スティービー・ワンダーの「Higher Ground」や「Superstition」、ビリー・ブレストンの「Outta Space」など、ファンキーな音楽にクラビネットの音を取り込んだヒット曲は数多くあります。1970年代、ファンキーなディ

Ultimate
dbx 160 compressor / limiter
dbx 160 compressor / limiter

オリジナルのdbx® 160は、1970年代の他のコンプレッサーと比べ、非常に歪みが少なくクリーンなサウンドで、特にドラムのコンプレッサーとして評価されてきました。入力信号に素早く反応するdbx 160コンプレッサーは

Ultimate
Eddie Kramer Bass Channel
Eddie Kramer Bass Channel

Eddie Kramer、ベースチャンネルを語る: 「Eddie Kramer Bass Channelの背後にあるアイデアは、威圧的にならず切り裂くような、プレゼンスたっぷりのファットベースを作り上げるということ。一般的に中低域に特徴を

Products
Promotion
Solution
Contents
Support
Company
Instagram YouTube