ギターとドラムのミックスを秒で解決するWAVESシグネチャーシリーズ【CLA & Eddie Kramer編】
スタッフEbです。 ロックの楽曲をミックスするとき、熱いギターサウンドとパワフルなドラムを表現するために、プラグインをいろいろと試行錯誤しています。「ロックギターやドラムに特化された専用のプラグインがあれば便利なのに、、」そんな時に強力な助っ人になってくれるのが、ロック界を牽引してきた名エンジニアによる即戦力プラグイン Waves Signature Seriesです。
2025.02.26
Waves Signature Series
名エンジニアのノウハウがひとつのコンポーネントにまとめられた Waves Signature シリーズを使えば、ボーカル、ギター、ベース、ドラム、シンセなど、楽器の特徴に合わせた音作りが素早く簡単に行えるそうです。そこで今回は Waves Signature Series の中から Chris Lord-Alge(CLA) と Eddie Kramer のプラグインを使って、ロックギター、ロックドラムをパワフルにできるのか試してみました。
今回ご紹介するSignature シリーズ
Chris Lord-Alge Signature Series
30年以上もの間、ロック界のサウンドを牽引してきたミキシング・エンジニア、クリス・ロード-アルジ。彼のテクニックそのものを、ギター、ベース、ドラム、ヴォーカルなど用途別の6つのプラグインとして再現しました
クリス・ロード-アルジのテクニックを、ギター、ベース、ドラム、ヴォーカルなど用途別の6つのプラグインとしてプラグイン化。エアロ・スミス、ミューズ、グリーン・デイ、U2、ナイン・インチ・ネイルズ、フー・ファイターズ、アラニス・モリセットなど、数え切れないほどの名盤で聴かれるエンジニアリングを、ミックスに取り入れることができます。
Eddie Kramer Signature Series
ビートルズが「愛こそはすべて」をレコーディングしたときコンソールにいたのは、エディ・クレーマーという名のエンジニアでした。 ジミ・ヘンドリックスが「パープル・ヘイズ」をレコーディングしたときコンソール
ビートルズ、ジミ・ヘンドリックス、レッド・ツェッペリンなど、歴史に残る数多くの制作現場で、輝かしいロックの歴史を築き上げて来たミキシングエンジニアの一人です。幾つものハードウェア・アウトボードのチェーンを必要としたサウンドがシンプルな操作で再現できるように、エディ・クレイマー自身のミックステクニックと哲学が詰め込まれています。
ギターをパワフルにしたい!
ギターはロックミュージックの中で最も肝心なパートです。迫力のあるギターサウンドを作るにはイコライザーやコンプレッサーなどを駆使する必要があり、それらの機材を複数用意して音作りするには、多くの知識と経験が求められます。プロエンジニアの技が手に入るプラグインを使って、パワフルなギターサウンドは作れるのか、CLA Guitars と Eddie Kramer Guitar Channel を試してみました。
【CLA Guitars】
ロックサウンドの重鎮、クリス・ロード・アルジによるギター専用プラグインです。Bon Jovi「Have A Nice Day」、Green Day「American Idiot」、Hoobastank「The Reason」。その他にもAerosmith、Linkin Park、Skillet、Avril Lavigne、UVERworld、B’z、X Japan、Miyaviなど、誰でもおそらく…数十曲は、彼が手掛けたサウンドを聴き込んでいるのではないでしょうか。 ※彼が手掛けた作品の “膨大なリスト” はオフィシャルサイトで確認できます。www.chrislordalge.com/credits
COMPRESSスライダーを上げるとギターサウンドが厚くなりました。ギターに迫力が足りないと感じたら、まずはCOMPRESSスライダーを試してみるのが良さそうです。スライダーの上のボタンに設定が3種類(PUSH、SPANK、WALL)用意されていて、WALLが文字通りギターの壁を作るのに重宝します。PITCHスライダはギターのステレオ感を広げてくれて、ギターの本数が増えたかのような派手なサウンドになります。元のギターサウンドは音がこもって奥に引っ込んでいましたが、1つのプラグインだけでエッジの効いたパワフルなギターの壁になったと思います。
【Eddie Kramer Guitar Channel】
正しい量のEQ、コンプレッション、ディレイ、リバーブ、わずかなフランジャー、これらの要素を組み合わせて作られたリードギター向け設定と、目の前に迫ってくるリズムギターを目指して作られたエフェクトチェーンを再現したプラグインです。ライブ感や有機的なサウンドが、ミックスの中ではっきりとした刺激を創り出してくれます。
3つのギターサウンド「RHYTHM 1、RHYTHM 2、LEAD」の中から今回はRHYTHM 1を使用しました。ギターがクリアーで骨太になり、このプラグインを通すだけで十分満足してしまいましたが、SENSITIVITYノブを上げるとさらにハイゲインな荒々しい音になり、曲のイメージに合わせて歪み感を調整できるのが便利でした。TREBLE と MID ノブでさらに音色作りをすることも可能です。ギターが前面にピッタリと張り付きながらステレオ感も増し、ロックらしい力強いギターになりました。
試聴に使用した音源
- Drums:UJAM Virtual Drummer SOLID
- Bass:UJAM Virtual Bassist ROWDY
- Guitar:UJAM Virtual Guitarist IRON
- Guitar:UJAM Virtual Guitarist IRON2
- Guitar:UJAM Virtual Guitarist CARBON
ドラムをパワフルにしたい!
ロックドラムはギターと並んでロックサウンドを象徴する重要なパートです。キック、スネア、タム、シンバル類、部屋鳴りなど、他の楽器と比べて音作りの要素が多く、アウトボードの深い知識と各ドラムパーツのサウンドをまとめ上げるテクニックが必要になります。この難関のドラムミックスがプロの技でどのように仕上げられるのか、CLA Drums と Eddie Kramer Drum Channel を試してみました。
【CLA Drums】
どんな曲でも、どんなミックスでも、誰でも素晴らしいドラムサウンドが楽しみながら手に入る、クリス・ロード・アルジ本人もお気に入りのドラム専用プロセッサーです。キック、スネア、タム、オーバーヘッド、ルームアンビエンス、そしてカウベル用のカテゴリーが用意されており、ドラムのパーツごとに使用することができます。
まずはスネア単発で試しました。元のスネアは野生味あるロックな音ですがパンチ感に欠けていたので COMPRESS スライダーの「SPANK」設定を試してみました。音の芯がタイトにまとまりアタック感も出て、クールな印象になりました。ボーカルが入ってくることを想定すると、スネアがボーカルの邪魔にならない位置に引っ込みながらも、ドラムの顔になるパワフルなスネアになりました。その次にキック、スネア、ハイハット、オーバートップのチャンネルに個別でプラグインを立ち上げて、それぞれのパーツに合わせたエフェクトカテゴリーを選びました。キックはロックのキックらしく、スネアはロックのスネアらしく、それぞれに特化されたスライダーが用意されているので、一つづつ試していくだけで欲しい音に近づき、ロックドラムらしいサウンドに仕上がりました。
【Eddie Kramer Drum Channel】
ビートルズ、ジミ・ヘンドリックス、レッド・ツェッペリンなどなど、ロックが市民権を得る時代に生まれたレコードに共通しているのは、最もミックスに頭を悩ませるドラムの音が普遍的な美しさを持っているということです。そんなレコードのミックスを手がけていたのがエディ・クレイマーです。ドラムパートの各トラックにインサートすることで、リスナーを感動させるドラムトラックを素早く構築することができます。
キック、スネア、タム、オーバーヘッドにプラグインを試してみました。Over Head パートの入力音が大きすぎたため SENSITIVITY を少し下げただけで他のパラメーターには全く触っていないのに、サウンドが太くクリアーになり驚きました。キックとスネアだけでなくタムがはっきりと聞き取れるようになり、曲後半のタム回しがアレンジとして生きてくるサウンドになりました。TREBLE と BASS ノブで音作りをすることも可能ですが、通すだけで粒立ちがはっきりとした音になるので出番は少なそうです。Eddie Kramer Guitar Channelを試聴したときにも感じましたが、Eddie Kramerのサウンドはスマートフォンで聞いてもきちんと再生される、どんな環境で再生してもサウンドのバランスが損なわれない部分にも魅力を感じました。
試聴に使用した音源
- Drums:UJAM Virtual Drummer BRUTE
- Bass:UJAM Virtual Bassist ROWDY
- Guitar:UJAM Virtual Guitarist IRON
- Guitar:UJAM Virtual Guitarist IRON2
- Guitar:UJAM Virtual Guitarist CARBON
- Synth:UJAM Usynth DELUXE
Chris Lord-Alge Signature Series は楽器に輝くパワーを与えてくれて、ギターやドラムを自分好みに作り込みたい時に大きな力になってくれると思いました。作り込む手間がかからず、色々なサウンドが短時間で試せるのも制作効率をアップしてくれます。そして Eddie Kramer Guitar Signature Series は、プロの技を再現できるシグネチャーシリーズのコンセプトを強く実感することができました。ただ通すだけでサウンドが生まれ変わり、これからミックスするのが楽しくなりそうです。ロックギター、ロックドラムをミックスする時に今回のプラグインを試してみるのはいかがでしょうか。
人気記事
リズム隊のミックスTips! – Vol.7 ギター前編
「リズム隊のミックスTips」。今回はギター前編です。
リズム隊のミックスTips! – Vol 3.1 番外ハイハット編
おかげさまで好評を頂いている「リズム隊のミックスTips」。イントロダクション、キック、スネアとここまで来ましたので、本日はハイハット編。番外編なので、Vol.4ではなく「Vol-3.1」としています。
もう部屋鳴りに悩まない。AIが不要な反響音を除去〜Clarity Vx DeReverb〜
ナレーションやボーカルを録音した際に、部屋の響きで言葉が聞き取りにくかったり、「部屋鳴り感」が強く出て映像や楽曲となじまなかった…そんな経験はありませんか?レコーディングスタジオのように本格的な吸音処
DiGiGrid DLS導入レポート – 鈴木Daichi秀行
2013年のNAMMショーで発表され、ネットワークで自由にI/Oを拡張でき、Wavesプラグインが超低レイテンシーで使えるソリューションとして注目を集めてきたDiGiGrid製品ですが、2014年10月、ここ日本でもPro Tools向け
Waves Curves AQ vs Curves Equator: 2つの製品を正しく使い分けるためのTips
Waves Curves AQとCurves Equatorが、あなたのミックスのアプローチをどう変えるかをご紹介します。トーンの問題を解決し、音色や存在感を引き出し、これまで以上にスマートかつスピーディにプロフェッショナルな仕
リズム隊のミックスTips! – Vol 3 スネア処理編
好評連載中、オフィスオーガスタの佐藤洋介さんによる「リズム隊のミックスTips」。今回は3本目となるスネア処理編です。BFD3を使用したTips記事ですが、他社のドラム音源でも、実際のドラムレコーディングでも有効
人気製品
Abbey Road Reverb Plates
1950年代に生まれたプレートリバーブは、現在まであらゆる音楽レコーディングに欠かせない要素であり続けています。60〜70年代、ビートルズやピンク・フロイドを始めとする先駆的バンドに頻繁に使用されたのがアビー
API 550
60年代後半に誕生し、API独特のパワフルかつ滑らかなキャクターを決定づけた伝説的レシプロ・イコライザーを、プラグインで再現
C4 Multiband Compressor
C4は、マルチバンド・ダイナミクス・プロセッシングのパワーハウス。あらゆるダイナミクス処理をマルチバンドで解決します。4バンドのエクスパンダー、リミッター、コンプに加え、ダイナミックEQとスタンダードなEQ
Clarity Vx DeReverb Pro
より高速なダイアログ編集ワークフローへようこそ - これまで以上に強力に、正確に、コントロールしながら、音声からリバーブを除去します。Clarityの先駆的なAIテクノロジーは、録音を瞬時に、そしてリアルタイムで
Codex Wavetable Synth
Waves Codexは、グラニュラー・ウェーブテーブル・シンセシス・エンジンを基本とする最先端のポリフォニック・シンセサイザーで、Wavesのバーチャル・ボルテージ・テクノロジーを採用、VCF、VCA などを搭載する実際
Clavinet
スティービー・ワンダーの「Higher Ground」や「Superstition」、ビリー・ブレストンの「Outta Space」など、ファンキーな音楽にクラビネットの音を取り込んだヒット曲は数多くあります。1970年代、ファンキーなディ
dbx 160 compressor / limiter
オリジナルのdbx® 160は、1970年代の他のコンプレッサーと比べ、非常に歪みが少なくクリーンなサウンドで、特にドラムのコンプレッサーとして評価されてきました。入力信号に素早く反応するdbx 160コンプレッサーは
Eddie Kramer Bass Channel
Eddie Kramer、ベースチャンネルを語る: 「Eddie Kramer Bass Channelの背後にあるアイデアは、威圧的にならず切り裂くような、プレゼンスたっぷりのファットベースを作り上げるということ。一般的に中低域に特徴を